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茶髪 21世紀へ 豊かさを深める
今日も朝から楽しい朝ご飯で一日が始まる。
ゆいは体調が戻って来たのか、ご飯をおかわり。元気になるには小百合の作ったご飯が一番!
お腹が満たされたゆいは、小百合と一緒に片づけをして身支度を始める。
「ねぇ?小百合。いつもの買い物さ、今日仕事が終わったら行かない?今日行っておけば日曜日楽でしょ?」
「あ~。そうだね。分かった。お財布持ってくね。でも、遅くならないの?」
「うん、今日は撮影ないから」
ゆいは鏡を見ながらピアスをつけては顔を振り『よしっ!』と小さな声で呟いた。
それをじっと見ていた小百合と鏡越しで目が合う。
「なに?小百合」
「ううん。ゆいはさ、どうしてピアスを開けようって思ったの?」
「どうして?・・・ですか」
特に理由はない・・・ことはない。
高校生の頃、ちょこっと茶髪だったゆいは、周りの友達がしてるピアスを見て真似をしたかった。
でも、『制服にピアスなんて、そんな恥ずかしいことしないで!茶髪でも母さん先生に呼ばれたのに!』と、まどかから猛反対された。
それで卒業を待って耳鼻科で開けてもらった。
「周りの友達がしてたから」
「でも、りおさん、ピアスしてないじゃん」
「う・・・うん。りおは、『お母さんからもらった大事な体に穴を開けるなんて!』って言う人だから」
「ふ~ん。ゆいって高校生の時は『そんな人』だったの?お母さんが前にゆいのこと、高校生の時はフラフラしてたって言ってたじゃん」
「そんな人?あ~。自分ではそうは思ってないけど。授業も真面目に出てたし」
ゆいの高校時代の写真を見たことがある小百合は、当時のゆいと今のゆいが重ならない。
「もし私がゆいと同級生だったら、モテるようなことさせない。気が気じゃないよ」
「りおが言うほど、私はモテなかったよ。小百合?そろそろ時間。お買い物の財布持った?」
小百合がもしあの頃に出会ってこんな関係になっていたら。不安で不安で怖い日々を過ごしていたかもしれないと思ったら、何だか胸がギュっとなり、『ヤダっ!』と叫んでしまう。
「ん?何が嫌なの?買い物?日曜日にする?」
「違うわ!バカ!」
「何よ!いきなり理由も言わないで『バカ!』って!」
「何でそんなにモテんのよ!」
「はぁ~?私より小百合の方が・・・お主、高校生の頃の私にヤキモチ焼いたのかな?ん?」
「うっさい!」
小百合はゆいに『ゆいは私の物なの!』と 両腕を掴み揺さぶった。
「うん。そうだよ。それが何?」
「いや・・・別に。時間だから行こうか・・・」
ゆいは玄関で靴を履くと、少し屈んで小百合と視線を合わせた。
「小百合?私はもうあの頃の私じゃないよ。今は小百合のことが大好きな私なんだから」
少し長めのチューをして、小百合の髪を撫でた。
「さっ、行くよ!」
ゆいは、まさか小百合が高校生の頃の自分にまでヤキモチを焼くとは思わなかった。
最近あまり出して来なかった小百合の『独占欲』。
ゆいはこの独占欲がちょっと・・・いや、かなり嬉しい。ゆいのことが好きだから独占欲が出ると言うものでもない。
好きの度合いがそうさせるものだから、ゆいとしては、この小百合の独占欲を秘かに喜んでいた。
こんなこと小百合が聞いたら、怒って口も聞いてくれないだろう。
「小百合?明日の天気は?」
「明日?」
小百合はナビのテレビを付けてワイドショーのテレビ画面の隅っこをじっと見た。
「小百合?明日の天気だけど?」
「あっ。テレビじゃ見れないか。ちょっと待って」
小百合はスマホで明日の天気を調べた。
「ん~。雨は降らない予想。でも晴れではないみたいだよ。雨さえ降らなきゃいいよね?車だし」
「うん・・・あっ、そろそろガソリン入れないと。帰りここ出たらスタンド行くからね」
「は~い」
出しなに、感情をあらわにした独り占めな気持ち。
もたもたしてたからスタジオにはギリギリの時間。
小百合は自分のせいだと『ごめんなさい』と謝った。
「どっちのこと?遅刻しそうだから?それともヤキモチ?」
「・・・ヤキモチ」
「じゃ~謝らなくていい。小百合の気持ち嬉しかったから。行くよ!」
駐車場に車を停めると、今日はゆいが先にスタジオの扉を開けた。