全力放送。リンダ
リンダ あなたの、あしたを、あたらしく
Twin Peaks : The Return
監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ
脚本/制作総指揮:マーク・フロスト
カイル・マクラクラン
2017年5月21日〜9月3日放送(米国)
これは、2017年放送のツイン・ピークス新シリーズについて、最終章まですべて見終えた上で、様々な謎について考察を試みる記事です。
ですので、第18章まですべての部分のネタバレを含みます。ご注意ください。
エピソードごとのストーリーや考察を読みたい方、その際に先のエピソードのネタバレを知りたくない方は、エピソードごとの記事がありますのでそちらをご覧ください。
各エピソードごとのリンクは、この記事のいちばん下にあります。
①ローラを連れ去ったのは誰か
の最後で、過去に戻ったクーパーはローラがレオたちの元へ向かうのを止め、彼女が殺される運命を回避します。ツイン・ピークスのすべての物語の発端となる「ローラの死体」は消え、世界は書き換わることになります。
しかし、その後にセーラ・パーマーのシーンが挟まれます。これは25年前ではなく、現在のセーラの姿です。異常な精神状態のセーラは、叫びをあげながら酒瓶でローラの写真を殴りつけます。
次のカットで、ローラの手を引いて座標の地点に近づいたクーパーは、引っ掻くような物音を聞きます。振り返るとローラは消えていて、そしてローラの悲鳴が森に響き渡ります。
最終章の混沌とした展開の、これが発端ですね。まずはここから考えてみます。
ヒントの一つは、にあるように思われます(旧シリーズでも、多くのヒントは第2章に置かれていました)。
のブラックロッジのシーンで、既に「25年後のローラ・パーマー」が登場しています。ローラは17歳で死んだはずだけど、役者は年をとってるから仕方がないよね…という話ではなかったのですね。ちゃんと意味があったわけです。
ローラは死んだはずだと言うクーパーに、ローラは「私は死んでる。でも生きてる」と答えます。本来の世界では死んでいるけれど、新しい世界では生きている、時点のローラ・パーマーです。ブラックロッジの混乱した時空の中で、クーパーはまだ自分が起こしていない物事の結果を見ているのです。
きみは誰だという問いに答えて、ローラはクーパーに口づけし、耳打ちをします。聞いたクーパーはにっこりと微笑みます。ローラは何か素晴らしいことをクーパーに告げたのです。
おそらくローラは、クーパーが彼女を死から救ってくれることを伝えて、ありがとうと言ったのでしょう。クーパーはこれによって、自分がどのように行動するかを決めたのだと思います。
しかしその直後、ローラは宙を見上げて何かに怯えるように震え出し、激しい悲鳴とともにどこかへ飛び去ってしまいます。
残されたクーパーは呆然として風の音を聞いています。赤いカーテンの向こうに闇が出現し、そこに白い馬が立っているのをクーパーは見ます。
おそらく、この一連のシーンは終わり(はじめ)に起こったことの予言(再現)です。
ローラの悲鳴は森でのものと同じです。森でかき消えたローラは、まさにこんなふうに宙に消えたようです。
そして、その直後に現れた白い馬こそが、ローラを連れ去ったものであると推測することができます。
白い馬はでもう一度登場します。
世界の書き換えが行われ、クーパーとダイアンがリチャードとリンダという名前になった世界。
ローラ・パーマーは生きていましたが、しかしこれまでのローラとは接点のない別人、テキサス州オデッサに住むキャリー・ペイジになっています。
彼女は「ジュディのコーヒーショップ」で働いていました。その店先にも、白い馬があります。
キャリーの家の中には白い馬の置き物が、リビングの非常に目立つ位置に飾られています。それはまるで神棚のようです。
ローラを連れ去った白い馬は、キャリーとなったローラをなおも支配し、見張り続けているのだと言えます。
死の運命を逃れたローラの行く先々に現れる白い馬。
白い馬は、セーラ・パーマーの象徴です。
②セーラ・パーマーと白い馬
セーラが白い馬を見るのは旧シリーズ第14章です。リーランドによって睡眠薬を盛られたセーラは白い馬の幻覚を見ます。セーラが眠った後、リーランドはキラー・ボブとなってマデリーン・ファーガソンを殺害することになります。
また、映画版にも同様の描写があります。
1989年2月22日、ローラが殺される1日前。
リーランドはセーラに「眠るためのミルク」をすすめます。それを飲んだセーラは部屋の中に白い馬を見て、眠ってしまいます。
セーラを眠らせておいて、リーランドはボブとして娘ローラのベッドに潜り込みます。
白い馬は睡眠薬がもたらす幻覚であるようですが、セーラはもともと幻視をする体質でもあります。
キラー・ボブの姿を最初に見たのはセーラで、旧シリーズ第1章のことです。ローラのベッドの影に潜んでいた男の顔を、セーラが皆に伝え、第3章でアンディが似顔絵を描きます。ボブの存在は、そのようにして人々の間に広まっていきました。
また、第29章ではセーラは神がかりのような状態になって、ツイン・ピークス保安官事務所の皆にウィンダム・アールの言葉を伝えます。「私はブラックロッジにいる…デイル・クーパーとともに」
旧シリーズでのセーラは、あくまでもリーランドの被害者であり、悪意を持った人物としては描かれていませんでした。
ですが、彼女は当時からとても神経質であり、憑依体質であり、どこか異様なところがありました。
彼女はリーランドから娘をかばうことはありましたが、積極的にリーランドから娘を守ろうとすることはありませんでした。うすうす、リーランドの行為に気づいていたような節もあるにも関わらず。
③ジュディの正体
とてもネガティブな力、ジャオデイ、もしくはジュディ。
でフィリップ・ジェフリーズはクーパーに、「ここで君はジュディを見つけるはずだ」と言っています。
でダギーが訪れた時には、「お前はジュディにもう会ってる」と言っています。ジェフリーズはこの時「お前はクーパーか?」と言っているので、ここでの「お前」はクーパーのことです。
また、「ジュディとは誰だ。ジュディは俺に何の用があるんだ」と尋ねるダギーに、「直接ジュディに聞いたらどうだ」と言ってジェフリーズは座標を教えます。
この時の座標は偽だったのですが、本来の座標はパーマー家に通じていました。
そして、キャリー・ペイジになったローラはジュディのコーヒーショップで働いている。ジュディの監視下にあるような状況にありました。
キャリーを支配しているもの=ジュディ=白い馬です。
以上のようなことを考えると、やはりセーラ・パーマーこそがジュディであると考えるしかないようです。
新シリーズでのセーラは様々な異様な行動を見せてきました。
では、スーパーで突然発狂し、「やめてセーラ」と自分自身に語りかけていました。
では、延々とループして同じ時間を繰り返すテレビをじっと見続けていました。
では、顔を外してその下の化け物じみた顔を見せて、絡んできた男に食いついて殺してしまいました。ここまで来るともう完全に怪物ですね。
では、セーラを心配して訪ねたホークが家の中から物音を聞き、セーラは「キッチンにちょっとね」と答えています。
パーマー家にセーラ以外の何かがいるとしたら、それは何でしょう。
もしこのセーラが化身で、ジュディに乗っ取られているとしたら、キッチンにいるのはもう一人のセーラ?
④ジュディはどこから来たか
では、1956年ニューメキシコ州の出来事が描かれていました。砂漠に落ちた卵が割れ、中から異様な羽を持ったカエルのような生物が現れる。森の男がラジオ局を襲撃して呪文を流すと、少女が眠ってしまい、その隙にこの飛びガエルが少女の口から体内に入ってしまう…。
この少女がセーラの若い頃であるなら、これこそが彼女にジュディが取り憑いた瞬間であるということになります。
仮に1956年の時点で15歳なら、1989年には47歳。30歳でローラを産んだことになり、年代的な辻褄はほぼ合います。
森の男の呪文はこうでした。
「これが水だ。そしてこれが井戸。すべて飲み干し降りていけ。この馬は白目で中は闇」
“This is the water and this is the well. Drink full and descend. The horse is the white of the eyes, dark within,”
ここにも馬が登場しています! 白い馬ではなく、白目の馬ですが。
この言葉は詩のようですが、実は明確な意味を持つ指令だったのかもしれません。
森の男はこの言葉によって、飛びガエルに指示を与えていたのかも。
つまり、こうです。
「これ(セーラ)は水であり井戸だから、彼女の内面をすべて飲み干して、精神の奥深くまで降りていけ。彼女は白目の馬で、その中にあるのは闇だ」
旧シリーズ第14章でリーランドを捨てる際に、ボブはリーランドを「この乗り物」と呼んでいました。
彼ら取り憑くものにとって、人間は乗り物、つまり馬です。
新シリーズでセーラが顔を外した時、その下には闇がありました。
を見た時、消防士が地球に送り込んだ「ローラの玉」からニューメキシコ砂漠のシーンが続くので、てっきり卵=ローラの玉かと思ってしまったのですが、どうやらそうではないようです。
そうであるなら、ローラとジュディが同じものになってしまいますからね。
飛びガエルの卵は、エクスペリメントが産み落としたボブのように、コンビニエンス・ストアの主である森の男たちが、邪悪な意図を持って解き放ったものであるということができそうです。
こうなると、全体は異様な様相を呈してきました。
ボブである、リーランド。ジュディである、セーラ。
そんな邪悪に取り憑かれた二人の娘であるローラは、消防士が送り込んだ光と愛の側の象徴である、という複雑な構図です。
というか、これこそが消防士の意図かもしれません。ボブやジュディというネガティブな力を、ローラとリーランド、セーラの親子の愛情が凌駕することを期待したのかも。
愛情の力で、黒い炎を消火しようとしている。消防士たるゆえんです。
⑤クーパーの意図と、その失敗
しかし残念ながら、事態は消防士の意図したようには進みませんでした。
ローラとリーランドの愛情がボ
ブを駆逐することはなく、ローラはリーランドに殺されてしまいました。
それから25年、クーパーと消防士は一石二鳥を狙いました。ダギーを倒してボブを最終的に破滅させ、それと同時に過去に戻ってローラを救って、ジュディを打ち負かす。
クーパーはローラをセーラに会わせることにこだわっていました。
娘であるローラと会うことで、セーラの中にあるはずの母としての愛情が呼び覚まされ、ジュディに打ち勝つ…という構図でしょうか。
あるいはもっとストレートに、キッチンにもう一人のセーラがいるのかもしれません。
しかし…それもまた失敗に終わった。
別世界の人々からの干渉、トレモンド夫人の干渉によって、セーラはどこかへ隠されてしまった。
どこへも辿り着けず、クーパーは途方にくれてしまい、ローラはローラにも戻れずキャリーでもいられず、世界の狭間で迷子になってしまい、過去から響く呼び声を聞いて悲鳴をあげた…
第3シーズン最終章は、そんな物語だったのではないでしょうか。
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旧シリーズのボックスセットです。
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