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主人公:マリ…思ったことが顔に出る普通のOL
占い師:愛子…マリの師匠的な存在。男好き。
お金を払わずに出ていったナミさん。
キャンペーン期間中?
んなわけないか。
無料って言っていたわよね。
でも食べて飲んで無料って。
じゃあ、もっと頼んでおくべきだったかしら。
いや、そういう問題ではない。
「あの、何で無料なんですか?」
「こっちの世界にはお金というものが存在しないのよ」
「えっ、お金がないんですか?」
「そうよ、だからお店にいってもお金を払う必要がないの」
「じゃあ、あそこのお店にある服やバッグも無料ってことですか」
「もちろんそうよ」
「じゃあ、あの宝石も化粧品もですよね」
「もちろんそうよ」
なんて素敵な世界なの。
欲しいものが何でも手に入るじゃない。
あれもこれもそれも全部タダで手に入る。
まさにパラダイス。
「ナミさん、素敵な世界ですね」
「あら、そう」
「だって何でも手に入るなんて、まさにパラダイス」
興奮が抑えきれない。
「さっきナミさんが言っていたユートビアってこのことなんですね」
あれっ?
こちらの興奮に対してナミさんの反応は薄いようにみえる。
「今のあなたからみたらパラダイスに見えるかもしれないけど、ここはあなたが思っているようなパラダイスでもユートビアではないわよ」
やっぱり反応が薄い。
私が思っているようなパラダイスではない。
ここをパラダイスと言わないで何をパラダイスという。
すると何やら魂がムズムズっとしてきたのを感じた。
ん?
何かしら。
そしてナミさんの意味ありげな言葉を思い返したら少し興奮が冷めてきた。
私が思っているパラダイスとは違う…。
色々考えているとナミさんがさっさっと歩いていくのが見えた。
追いかけながらさっきの疑問がまた浮かんできた。
何でお金が存在しないのだろうか。
「ナミさん、何でお金が存在しないんですか?」
「お金はトラブルの元だからよ」
「えっ?」
「だって人間界ではトラブルの大元でしょ」
「ん、まあそれはそうですけど」
でもそんな理由でお金が存在しないなんて。
「冗談よ冗談」
なんかリアルすぎて笑えない冗談だ。
たぶん今私は引きつった笑いをしているんだろうな。
そんなことは気にもせずナミさんは話続けている。
「まずこの世界にあるものはすべて自由に使っていいの」
「元々自然のものを使っているから当たり前だけどタダ」
「自然しかなかった世界を、自然のものを使用してこうやって発展させていったのよ」
「原始時代から始まったみたいにですか?」
「まあそうね、そんな感じから始まってどんどん今のようになっていったの」
「でもこっちの世界のほうが遥かに発達してますよね」
「まあね、大きな理由としては2つあるわ」
そういうとナミさんは近くにあるベンチに座った。
うわっ、
私も隣に座ってみたが驚くほど座り心地がいい。
一瞬、木の硬いベンチと思いきや、フカフカした木のベンチだった。
なんだこの不思議なベンチは。
私が驚いていることは気にしないで話し続けていた。
「1つ目は、争い事がないってこと」
「この世界の人たちは争いごとを一切しないの。エゴがなく、人のためにという思いで日々過ごしているの」
「何が関係あるんですか?」
「戦争がないのよ」
「つまり争うという余計なことをしてないで日々人のために何かをしようと過ごしているからよ」
「考えてごらん、人間界では小さい争いから大きな争いまで日々行われているし、過去にも行われてきたわよね」
「………」
「だからこっちの世界にはないけど、人間界に存在しいてるものも結構あるのよ。何かわかる?」
「ん~、わからないです」
「こっちの世界には、銃や爆弾や戦車などは戦争に関わるものは存在しないわ。核爆弾なんて愚の骨頂よ」
ナミさんの口調が激しくなってきているのがわかる。
「人間界の歴史は争いがあるから遅れているのよ」
「こっちの世界は争い事がないからその分何倍も世の中のために進化しているってわけ」
「戦争や争い事から何かいい事得られた?」
「いえ、いいことは何もないです」
「でしょ、何もいいことなどないのよ」
「そのためどれだけ多くの人がこっちに戻ってきたことか」
ナミさんが言っていることには説得力があった。
私たちの歴史はどれだけ争い事をしてきて、今なお世界を見ればまだ争い事が絶えない。
身近な人間関係でも争い事は時代を超えて行われている。
大なり小なり人間は争い事を続けている。
あの世から見たら私たちがやっている争い事はどれだけ醜く見えているんだろうか。
戦争や争い事に費やした時間をもっと世の中のために使ったらどれだけいい世界ができたことか。
色々考えているとナミさんが立ち上がって道路のほうに歩いていった。
戦争の話をしたから気分を害したのかしら。
するとナミさんがこっちに来なさいと手招いている。
手招いているナミさんの後ろでは物凄いスピードで車が走っているのが見える。
ナミさんの所に近づいてよく見てみると、車には車輪がなかった。
少し浮いて動いている、いや飛んでいるというべきなのか。
ここまで発展しているんだと感心してしまった。
「これがこっちの世界の車よ。凄いスピードでしょ」
確かに物凄いスピードで走っている。
随分あぶない乗り物だと感じた。
そんな物珍しく車を見ていると後ろに人影を感じた。
そして突然後ろから押されるのを感じた。
えっ!
気づくと道路に倒れこもうとしている自分がいた。
あれっ、このままじゃ車にぶつかる。
よく事故が起きる瞬間ってスローモーションに見えるというけれど、私は今それを体験している。
ゆっくりと道路に倒れこもうとしている自分と、そんな自分に向かって走ってくる車が見え
。
ああっ、
私死ぬの?
まだまだやりたいことがいっぱいあるのにこのまま死ぬのはいやだ。
世界一周旅行、日本グルメツアー、イケメンの彼氏、バッグに宝石、これからだっていうのに。
いや!
絶対に死にたくない。
でも時間は止まってくれない。
そんな思いは届かずゆっくりと地面に倒れこんでいる自分がいた。
道路に倒れこんだ瞬間、
ドンッ
車が体に当たったのを感じた。
続きは54話でお会いしましょう!
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うわっ、
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なんだこの不思議なベンチは。
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「1つ目は、争い事がないってこと」
「この世界の人たちは争いごとを一切しないの。エゴがなく、人のためにという思いで日々過ごしているの」
「何が関係あるんですか?」
「戦争がないのよ」
「つまり争うという余計なことをしてないで日々人のために何かをしようと過ごしているからよ」
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「だからこっちの世界にはないけど、人間界に存在しいてるものも結構あるのよ。何かわかる?」
「ん~、わからないです」
「こっちの世界には、銃や爆弾や戦車などは戦争に関わるものは存在しないわ。核爆弾なんて愚の骨頂よ」
ナミさんの口調が激しくなってきているのがわかる。
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