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作詞家・松本隆が明かす「あの曲の1行目に、僕が隠した秘密」③

ジャニーさんのこだわり

でも1行目に気合を入れるというのは、ポップスを作るうえでどの曲でも気を付けていること。

斉藤由貴の『卒業』（’85年）もそう。曲全体の1行目はサラッと書き出して、歌詞に世界を作る。一方で、CMとかでもたくさん流れるサビの1行目は引っかかりになるから、目立つようなフレーズを使う。

桑名正博の『セクシャルバイオレットNo.1』（’79年）はCMソングで、サビに歌うキャッチコピーはとんでもなくダサいけれど（笑）、不思議なことに真面目に連呼していると格好がついてくるものなんだ。じつはこれはローリング・ストーンズとか海外のロックバンドも一緒だったりする。

この曲がキャッチコピーありきだったのは、当時コピーライターがすごく脚光を浴びていたから、というのもあるかもしれない。作詞家より格好いい職業だなあなんて僕もちょっと思ったことがあります（笑）。

ただ、やっぱり彼らは商品を売っているわけで、いくら美味しそうな空気を作っても、結局は商品に帰着する。詞のように物語を紡いだりしないんです。

歌詞を作るうえでテーマになるのは人間の気持ちや生き方で、その世界観を大衆に伝えることが大切なんです。

だから『赤いスイートピー』（’82年）や『SWEET MEMORIES』（’83年）といった曲を松田聖子に書いても、彼女自身を商品にするのではなく、松田聖子のような生き方、夢の見方を商品にしていくことができる。そこに作詞家としてのプライドがあるのだと。

そう思えたからこそ、松田聖子でも、薬師丸ひろ子の『探偵物語』（’83年）でも、男女ともに共感できるラブソングを作るところまで詞の世界に潜れたんだと思う。

ラブソングを書くうえで常日頃考えているのは、恋愛感情を男と女で分けるからわからなくなっちゃう、ということ。

男にも女々しいけれど可愛げのあるところがあるし、女にもやんちゃだったり男の子をからかうくらいわんぱくな少女がいたりするということを僕は表現したかった。いつも男が強くて女が下、という図式じゃつまらないじゃない。

だから作詞家は男女どちらに詞を提供しても、伝え方はいくらでもある。女性のアイドルと仕事をする一方で、ジャニーズにも詞をいくつか書いたけれど、そのひとつが近藤真彦のデビューシングル『スニーカーぶる～す』（’80年）でした。

ジャニーズは、ご存じの通り、アーティストを売ることについて確信をもってやっているけれど、当時、たのきんトリオでいちばんファンレターが多かったのがマッチで、田原俊彦の倍くらいあったんじゃないかと思う。

だからジャニーさんは「マッチは田原の倍売れるだろう」と考えたんでしょう。先にシングルを出した田原俊彦が70万枚くらい売れたから、マッチは100万枚売れるだろうと。

ジャニーさんはとても面白い人で、ルックスがいい子を集めるというのもあるだろうけど、音楽性の高いロックを歌わせて本物のスターを作りたがった。だから筒美京平さんとかもどんどん起用していたんだろうね。

曲についてもすごくこだわりの強い人で、ジャニーさんのOKが出るまで永久にやり直しの世界。『スニーカーぶる～す』には別のテイクがあるというけれど、何度も書き直しているからそれは無数にあるんじゃないかな。

あやさんの海苔文字弁当

現在の芳野藤丸さん

プロ45周年の芳野は67歳。 北海道函館市出身。 キャプテンひろ＆スペースバンドでプロデビューし、 スタジオミュージシャンとして1万曲を超えるレコーディングに参加。 「木綿のハンカチーフ」「天城越え」「いちご白書をもう一度」など、 心に残るギタープレイで日本の音楽シーンを華やかに飾っています。 今年5月に亡くなった西城秀樹のバックバンドをつとめたのち、 SHOGUNを結成。 「男達のメロディー」「Bad City」などで大ブレイクしました。 

ポニョ吉もライヴに行きたかった